沖縄本島から、約300km南西に位置する宮古島。

サンゴ礁が隆起することで生まれたこの島は、沖縄随一と謳われる透明度の高い海を誇っており、独自の文化もあいまって、観光地として断トツの人気を誇っています。

一生に一度は訪れるべきこの場所で、あなたはどんな時間を過ごしたいですか?

やっぱり観光?いやいや、それだけではもったいない!

この島で、暮らすように地域を感じ、人との深い繋がりを得る、そんな特別な時間を過ごす方法があるのです。

その鍵となるのが、今回ご紹介する株式会社ビザライ。宮古島を中心に、障害福祉を軸にした幅広い事業を展開しています。

遊び心満載の「多機能型福祉施設」

ビザライの本拠地、多機能型福祉施設みやくるる

この敷地の中で、保育園、児童発達支援、放課後等デイサービス、訪問看護ステーション、グループホームといった医療・保育・福祉のさまざまな機能がひとつになっています。

木の温もりを基調としながら、多種多様な照明や色とりどりの壁紙に囲まれた内装は、安心感とワクワク感が共存する空間に。

施設内にはちいきの保健室 たねという、助産師が妊婦さんや若いお母さんのメンタルケアを行う相談窓口もあり、住民の方にも開かれた拠点となっています。

「◯」でつながる子どもたち

そんなみやくるるを歩いていると聞こえてくるのは、明るい歓声!一階で過ごすうららか保育園の子どもたちが、訪れる人を笑顔で迎えてくれます。この日は、後ほどご紹介する宮原果樹園で掘ったさつまいもを使ってのクッキングが行われていました。

そこへ、ひとりの子どもがやってきました。よーく見ると、鼻にチューブを入れた医療的ケア児さんのよう。

実はこの施設、いわゆる健常と呼ばれる子どもが通う保育園と、障害を持つ子どもが通う児童発達支援・放課後等デイサービスが繋がった「円形」の設計。ここで過ごす子どもたちは障害の有無を超えて、日常的に、当たり前に、関わりを持っています。

今では、障害の有無を超えて仲を深めた子どもたちが近所のスーパーで声をかけあう姿もあり、そんな風景を一番喜んでいるのは「障害児であること以前に、ひとりの子どもとして扱ってほしい。」と願っていた親御さんだそう。

事業とともに広がる障害者の「選択肢」

次に向かったのは、就労継続支援A型事業所 夢工房。障害を持つ方が地域資源を活かして働くための就労支援を行っています。

この日ご一緒させていただいたのは、ホテル清掃のお仕事。素早く島内を廻る体力と清潔さを保つための丁寧さが求められる業務ですが、慣れた様子でテキパキと仕事をこなされる姿は「さすが」の一言。

続いて訪れたのは、島の東側に位置する宮原果樹園。太陽の光を浴びて育った丸い果実は、宮古島の名産「マイヤーレモン」です。

現在こちらの果樹園には、夢工房での就労を経て就職をされた、職員の久貝さんがいらっしゃいます。お話しする時はとっても穏やかな久貝さんですが、食べ頃のレモンを見定める際の「目」は本物!プロ意識がオーラとなって溢れ出ています。

剪定に肥料作りに袋詰めにと、大変忙しい現場ですが、そのおいしさが認められ宮原果樹園のレモンは島中の市場やバーで大人気!そういった反響が、久貝さんの力になっているそうです。

実は、今回訪れたホテルや宮原果樹園もビザライの関連会社。

福祉の枠を超えたそれらの事業が、互いに連携を取りながら運営される。そういった幅広い展開と仕組みづくりが、障害を持つ方の働き先の「選択肢」にも繋がっているのです。

お洒落に、美味しく、フェアトレード!

若者や観光客で賑わう国道沿いに店を構えるのはフェアトレード雑貨&カフェ・わとわと。こちらのお店も、株式会社ビザライが運営する拠点のひとつです!

やちむんや琉球ガラスといった沖縄の工芸品に並んで、ビザライが運営する就労支援施設 夢工房をはじめとする就労支援施設で作られた雑貨が販売されています。

「フェアトレード」と聞くと、国と国との対等な貿易を連想しますが、ここでは障害を持つ方が作った物に対する適正な価値をつける「フェアトレード」を行っているそう。

店内のカフェでは、黒糖を使ったかき氷やマンゴーたっぷりのスムージーなど、宮古島の日差しで火照った体に嬉しいメニューを食べることができます。

障害児者が作る商品を販売するショップは数多くあれど、その運営は大変難しいとされています。しかしわとわとでは、このようにカフェを併設したり、豊富な商品を品揃えをするといった工夫によって、地元の方にも愛される存在となり、価値の発信を継続しているのです。

「普」つうの「暮」らしを、「支」える。

「現在は障害分野をメインとした事業を行っていますが、僕たちとしてはただ単純に『困ってる人たちを支えたい』、ただそれだけなんです。」

そう語るのは株式会社ビザライの創始者、勝連さん。

以前はホテルや不動産業界といった異分野で働いていたため、ご自身を「福祉のド素人」と自称されています。しかし、だからこそ持っているシンプルな想いと広い視野が、現在のビザライの形を作っているということは言うまでもありません。

「福祉を『崇高なもの』だと捉えている人もいます。でも僕は、福祉は泥臭いものでいいと思ってるんですよ。自分の人生を自分で決める権利は誰にでもある、そういった当たり前のことを守りたいだけなんです。だから、福祉は特別なことじゃなくて『普通の暮らしを支える』、それだけでいいと思っています。」

お話を聞く限り、ここで過ごす障害児者、そして職員の方々は、自分達のいる環境を決して特別だとは思っていません。しかし、その『普通』こそが、ビザライが創り出した大きな価値だと思うのです。

あなたも、宮古島の青い空と透き通る海、そして『普通の暮らし』を中心に置いた出会いに身を任せながら、凝り固まった体と固定概念をゆるめてみませんか?

映像 : 末吉 理
取材 : 室伏 長子(NPO法人Ubdobe)
編集・文・写真 : はぎわら しょうこ(NPO法人Ubdobe)

※取材対象者には一時的にマスクを外してもらい、撮影をしました。