移住者ランキング17年連続1位(※)を誇る長野県。なかでも富士見町は、ここ数年で右肩上がりに移住者が増え、カフェやセレクトショップ、コワーキングスペースといった拠点が続々オープン。全国的に注目される地域となっています。

※『田舎暮らしの本』2023年2月号(宝島社)2023年版「移住したい都道府県」ランキングより

そんな地域の遍歴を古くから見守る社会福祉法人 富士見町社会福祉協議会(以下富士見町社協)。

社協といえば元々地域との繋がりが強い印象のある組織ではありますが、富士見町社協はそこに住む一人ひとりを見つめるうちに独自の進化を遂げた、いわば『ガラパゴス』な社協なのです。

住み慣れた家での生活。住み慣れた地域との関わり。
これまで築き上げた家族や周りの人たちとの繋がり。

そんな当たり前の日常を、 介護が必要になるとともに(時には本人の希望に反して)手放さなければならない。ここ数年の日本では、そのような流れが当たり前となっていました。

そんな過去の当たり前に一石を投じるべく、ここ富士見町社協は職員一丸となって訪問事業に取り組んでいます。

長野の自然の恵みに囲まれた施設環境

富士見町社協は、現在町内に4つの拠点を持ち、11のサービスを展開しています。その中心となっているのが、小高い丘の上に建てられた複合施設ふれあいセンターふじみ。

デイサービスやショートステイの他、ゲートボールコートや温泉設備が完備されており、普段から地域の方々の憩いの場となっています。

八ヶ岳の麓に位置するだけあって、窓から見える山々の景色は圧巻の一言です。

駐車場の脇には、地元の美味しい野菜が並ぶ無人直売所がありました。絵本に出てきそうな可愛らしい風貌です。お仕事帰りにここから野菜を買って帰る方も多くいらっしゃるそう。

 

訪問介護・定期巡回で町を丸ごと見守り、支える

そんな富士見町社協が最も力を入れているのが、訪問介護事業・定期巡回訪問事業。スタッフの皆さんは日々社用車に乗って町中を回り、地域の高齢者のお宅へ訪問しています。

日中の決められた時間にご利用者さんのご自宅に訪問して支援を行う訪問介護に対し、定期巡回訪問は1日を通して行う短時間の巡回に加えて、必要があれば24時間対応も可能なフレキシブルなサービス。

富士見町社協では、この2つのサービスの組み合わせによって、地域の高齢者ができる限りご自宅で支援を受けられる環境づくりを行っています。

「とはいえ、いつも利用者さんがお家にいるとは限らないんですよ」

そう教えてくれたのは、訪問事業を行う24時間ケアサポートふじみの小池さん。

富士見町社協のこだわりは、利用者さん一人ひとりが持つ生活スタイルやリズムを大切にすること。巡回があるからといって「必ず家にいてください!」なんて縛り付けることはありません。

利用者さんの姿がない時は、近くの畑を見てみたり、ご近所さんに「あそこで見たよ」と教えてもらって様子を見に行ったり。

暮らしに寄り添うその姿は、さながら町を丸ごと担当し、見守り、支えるプロフェッショナルです。

大切なのは、「引き算」の支援

この日は、定期巡回でひとり暮らしのご利用者さんの元へ。手際よくバイタルチェックを済ませると、担当スタッフの丸山さんが話しかけます。

「私はごはんを作ってきますから、台拭きをお願いしますね。」

すると、先ほどまでじっと座っていた利用者さんがすくっと体を起こして、目の前の広いテーブルを慣れた手付きで拭き始めました。

鼻歌まで歌って、なんだかとっても楽しそう。

富士見町社協が大切にしているのが自立支援。ご本人のできることはご本人にしていただき、それ以外をスタッフが担うということを徹底しているのだそう。

手を出さない支援は言葉で言うことは簡単ですが、一度支援の現場に入ったことのある方ならばその難しさは痛いほどわかるはず。

「私たちは、一方的で一辺倒なサービスを押し付けることは、結果としてその方のできることを奪ってしまう行為だと考えています。だから支援に入る時は、随時ご本人のできることを見極めて、少しずつでもそれに取り組んでいただくように心がけているんです。そうやってご一緒していると、本当にご本人のできることが増えていったりするんですよ。」

実はこの利用者さんも、支援に入る前はほとんど歩くことができなかったそう。しかし、今ではスタッフが支援に入るたびにこうして玄関までお見送りに来てくださいます。

「ここのお家に毎日おかずを持って訪ねて来てくれるご近所さんがいらっしゃるんですけど、受け取る方はもちろん、それって渡す側にとっても生きがいだったりするんじゃないかと思うんです。私たちの支援が入ることによって、利用者さんができる限り長くここで暮らすことができて、それが地域の繋がりを守ることにも繋がっていく。そうだとすれば、すごくやりがいのある仕事だなと思います。」

家での生活を守り続けることの価値

次に訪れたのは自然豊かな田んぼの中に建つ、大きな一軒家。ここで暮らしているのは、85歳の宏太郎さんです。先ほどと同じく、洗濯物の取り込みなどは、ご自身でしていただきながら、食事の準備や体調のチェックを富士見町社協の訪問スタッフが担います。

「これは、妻と子ども達を描いた絵なんだ。」

昔から、アートのお仕事をされていた宏太郎さん。ご自宅の中には、これまでに描いた作品の一部が大切に保管されていました。

「この家も、若い頃に建てたの。富士見町の自然が見える場所を探してね。」

こだわりの2階は宏太郎さんのアトリエ。大きな一枚ガラスの窓いっぱいに、荘厳な八ヶ岳が広がります。

「昔はよく世界中を周って絵を描いていたけれど、今は足が動かなくなっちゃって。僕は目で見たものしか描かないからね。今は天気がいい日にこの窓から八ヶ岳を眺めて、絵に描くんだよ。」

この窓から見える八ヶ岳は、宏太郎さんにとって特別なもの。富士見町社協のサービスは、長い人生を経て築き上げた宏太郎さんのライフワークを今でも守り続けています。

目の前の「ひとり」にどれだけ一生懸命になれるか?

実は、富士見町社協にも多くの移住者が働かれています。また、職員の中には酪農の仕事を兼業されている方も!多様な働き方が行えることで「誰もが自分らしく生き抜けるように」という社協の想いは、働き手の暮らしにも表れているようです。

「いいんですよ、わがままでも何でも。」

富士見町社協のサービスについてそう語るのは、介護保険事業所長の小林誠一さん。

「施設の中での集団生活や、決められたスケジュールに合わせて生活することを窮屈に感じる人もいて当然だと思うんです。そういう方は、最後までできる限りわがままに過ごして欲しいと思っています。だから僕たちは、“大勢の高齢者”ではなく“目の前のひとり”に対して何ができるのか?を考え続けたいんです。」

事務局次長の小林功さんによると、富士見町社協がこうした支援を実現できているのは地域性も関係しているそう。

富士見町って、本当に町民に対してすごく優しくて、福祉にも力を入れている地域なんです。困り事に対してちゃんと応えていかなきゃいけないっていうスタンスを持っている素晴らしい行政の元で、色々な制度やサービスが形作られている。そういう富士見町まるごとの姿勢や魅力っていうのを、多くの方に感じていただきたいと思っています。」

地域は個人の集合体。

富士見町社協を訪れれば、個別支援だからこそ叶えられる地域福祉の未来が見えてくるかもしれません。

 

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