東京都多摩市。50年前から続く団地商店街。

同じ形の同じ建築物に、そこに住む一人ひとりの生活感が強烈な個性となって滲み出ているその風景は、この地域を知らない私たちをも胸がキュッとなるようなノスタルジックな気持ちにさせてくれます。

永山駅を出て、商店街を歩くとすぐに出迎えてくれるのは、なんとも可愛らしい駄菓子屋さん。・・・と、思いきや。実はここ、障害児者が通う福祉事業所でもあるんです。

一般社団法人 Life isが運営する、児童発達支援・生活介護の事業所『+laugh(アンドラフ)』。今回は、スタッフや地域の方々から、この場所の魅力についてお伺いしました。

医療的ケア児者が町の空気を感じながら過ごす場所

この事業所に通うのは、気管切開や胃ろうなどの「医療的ケア」が必要な方々。子どもから成人された方まで、幅広くご利用されています。

残念ながら、これまでその多くが社会の誤った認識や古い形態の施設環境が壁となって、日常的に外の世界に触れる機会を失ってきました。

しかし、+laughを見ていると、そんな社会課題が嘘だったかのような感覚に。

障害を持つ子どもたちが町の風に触れ、地域の方々と共に時間を過ごす。ここではそんな「当たり前」の日常が「当たり前」に流れているのです。

駄菓子屋さんは、みんなの居場所

品揃え豊かな駄菓子屋さんは、町の人気スポット!地域の子どもたちからお年寄りまでが次々と訪れ、目をキラキラさせながら今日のおやつを選んでいました。

レジ打ちを担当するのは、生活介護の利用者さん。iPadを使い、一つひとつ丁寧に計算する様子を、子どもたちは小窓からじっと見つめて待っています。

交流ではなく「関わりしろ」

この日は、縁側に座って小さなビニールプールを出して水遊び。

すると・・・集まるわ集まるわ、学校や保育園帰りの子どもたちが次々と!

交流の機会を設けるのではなく、生活の中に他者との関わりしろのある状態を設ける。それが+laughの環境づくり。

まさに今ここにいる子どもたちも誰に言われるでもなく、ただ「そこにいたいから」こうやって足を止めているのです。

今、団地がおもしろい!

もしかして「団地」と聞くと、どうにも古びたイメージを持ってしまう人もいるかもしれません。

でもその感覚をアップデートしないのは、とってももったいない!遊歩道で繋がるこの商店街を歩いてみれば、一歩足を踏み入れると、そこはエモさの宝庫。50年続く暮らしの温度と新しい文化の芽吹きが混在するカオス空間。

老いも若きも、重鎮も新参者も、障害の有無も、なんだか全部どうでも良くなってしまうような居心地の良さを感じることができます。

実は、+laughを運営する一般社団法人Life is代表理事の影近さんも、その魅力に取り憑かれた人のひとり。

北海道網走市で生まれ、宮城、東京と各所を渡り歩いた結果、多摩ニュータウンへの移住と団地商店街での出店を決めたそう。

今では、気づけば町ゆく住民の方々や同じ商店街の仲間とおしゃべりをしている馴染みっぷりで、本当はここで生まれ育ったのでは?と疑ってしまうほどです。

「自然とそうなっていく包容力が、この町にはあるんです。」と影近さんは笑います。

雰囲気、空気、風、景色。

+laughさんの魅力を伝えようとすると、なんだかふんわりした言葉ばかり使ってしまいます。

もちろん言葉にしようとすれば、「地域福祉」や「ダイバーシティ」といった用語を使っていくらでも解説できてしまうのですが。

この場所の一番すごいところは、言葉を使うのがもったいないくらいに、それらを「感じさせて」くれるところ。

町に溶け込むことで、障害を持つ子どもたちの居場所を開いた+laughのすごさ。

皆さんもぜひ実際に、現場で「感じて」きてください。

映像 : 末吉 理
編集・文・写真 : はぎわら しょうこ(NPO法人Ubdobe)

※取材対象者には一時的にマスクを外してもらい、撮影をしました。