徳島県三好市。

四国のほぼ中央に位置するこの地は、ニューヨークの大手旅行雑誌「トラベル+レジャー」で「訪れるべき50の旅行地」に選ばれた「祖谷渓(いやけい)」をはじめ、豊かな自然環境に恵まれ、世界的な注目を受けています。

しかし、すごいのは自然だけではありません。

「地域」と「福祉」の関わりの重要性が全国的に謳われるずっと前から、福祉施設の枠を飛び出してまちと関わり続けているのが今回ご紹介する社会福祉法人池田博愛会。

その活動が評価され、今や三好市は「地域福祉の先進地域」となっています。

幅広い事業展開の背景にある「ほっとかない」精神

児童発達支援、就労移行支援、就労継続支援(B型)、グループホーム、相談支援、特別養護老人ホーム、デイサービス、訪問介護・・・。池田博愛会が手がける事業は、児童・成人の障害者福祉から高齢者福祉まで様々!

これは、昭和36年に障害者施設を開設し、半世紀に渡って地域を見つめる中で必然的に増えていったんだそう。

子どもも、障害者も、高齢者も、誰ひとりとして取り残さない、通称「ほっとかない精神」は近年トレンドとなっているSDGsの『基本理念』を想起させます。「時代が追いつく」とはまさにこのこと!

見る者を虜にする国産割り箸工場

今回、特に取材陣が目を奪われたのがこちらの割り箸工場。施設に入った瞬間、噴き上げる蒸気とともにヒノキやスギのすっきりとした香りが漂います。

ここ「セルプ箸蔵」では、林業が盛んな地域性を活かし、就労支援事業として割り箸の生産を行っています。現在、日本で使われている割り箸の約97%は外国産。つまりセルプ箸蔵は、残りの3%を支える貴重な国産割り箸工場でもあるのです。工場好きは必見ですよ!

地域福祉を「とことん」突き詰めた複合施設の秘密

まちの中心に現れたのは、洗練された建築デザインの巨大施設。

入ってすぐに見えるのは、新鮮な採れたて野菜が並ぶ「産直市」。奥には焼きたての香りがするパン屋さんや、賑やかな食堂も広がっています。

驚くことなかれ、実はここ「地域交流拠点箸蔵とことん」も、池田博愛会が運営をしている施設のひとつ!!

2階は遊具やおもちゃが揃う「こども広場」となっていたり、生涯学習や個展などのイベントが行われたりと、今や地元住民の憩いの場に。この日も家族連れからお年寄りまで、幅広い年齢層のお客さんで賑わっていました。

一見、福祉の施設には見えませんが、実は日々交わされる地域住民と職員さんの何気ない会話は、結果として日常的な「見守り」に繋がっています。さらに、医療・福祉に関する相談窓口としての機能がある点も池田博愛会ならでは。

「地域交流拠点 箸蔵とことん」はその名の通り、池田博愛会が地域のことを「とことん」考えた先に辿り着いた地域福祉の集大成なのです。

震える足で辿り着く、唯一無二の絶景

三好市の観光スポットといえば世界的に有名な「かずら橋」。

この地域で採れる「シラクチカズラ」を編んで作られた吊り橋は、足を踏み出すごとにゆらゆらと揺れてスリル満点!!

足場の隙間から覗く美しい祖谷渓は、感動と恐怖の狭間という複雑な感情を味あわせてくれることでしょう。

阿波弁があたたかい、もうひとつの家族

そしてなんといっても、三好市の魅力は「人」!

リクエストすれば(しなくても?!)すぐに阿波踊りを披露してくれる福祉留学担当の岡千賀子さん、通称おかちかさんをはじめ、行く先々で家族のように迎えてくれるあたたかな職員・ご利用者さんばかりです。

実際、池田博愛会を訪れた人の多くが数年以内にリピーターとしてまた訪れていることが全てを物語っているのではないでしょうか。

本場の「おせっかい」を体感したい方、「とことん」「ほっとかない」を地域で実現したい方はぜひ三好市へ!

映像 : 末吉 理
取材 : 室伏 長子(NPO法人Ubdobe)
編集・文・写真 : はぎわら しょうこ(NPO法人Ubdobe)

※取材対象者には一時的にマスクを外してもらい、撮影をしました。