窓を開けると、鼻先をくすぐる心地よい潮風と、静かに繰り返される穏やかな波の音。
目の前には、日本三景として名高い「天橋立」の美しい白砂青松と、
どこまでも青く深い海、そして生き生きとした緑をたたえる豊かな森が広がっています。

都会の喧騒から遠く離れ、
豊かな自然の呼吸がすぐそばに聞こえる京都府宮津市。

この美しい海辺の町に、全国の福祉関係者や若者たちから熱い視線を集める場所があります。
それが、社会福祉法人みねやま福祉会が運営する複合型施設「Ma・RooTs(マ・ルート)」です。

福祉施設は、「高齢者」「障がい者」「子ども」といったように、対象ごとに施設が作られて、そこにそれぞれの専門性の高いスタッフを配置するのが当たり前です。
しかしマ・ルートでは、そのすべての垣根を心地よく取り払い、誰もが同じ空間を分け合う「ごちゃまぜの福祉」を実践しています。

目次

    ひとつの屋根の下、4つの個性が混ざり合う場所

    マ・ルートという大きな一つの建物の中には、
    驚くほど多様な日常が共存しています。
    ここに集うのは、大きく分けて4つの機能があります。

    ① キッズランド(吉津子ども園 分園)
    0歳から5歳までの元気な子どもたちが通う認定こども園。
    ② ワンダーハーバー(障害者・児施設)
    就労継続支援B型や生活介護、放課後等デイサービス。
    ③ エルダータウン
    定員60名の、ゆったりとした時間が流れる特別養護老人ホーム。
    ④ 福祉人材養成センター
    未来の福祉を担う実習生やインターンが集う研修拠点。


    マ・ルートの面白いところは、ここに「旅人(インターン生や実習生)」が泊まれる宿泊スペースまで用意されていること。
    福祉留学で訪れる留学生も、この建物内にある部屋に滞在できます。
    部屋の窓いっぱいに広がる日本の原風景を眺めているだけで、移動の緊張もすぅっと解きほぐれていくはずです。

    「名札」を外したその先に。ただ、人と人が支え合う日常

    マ・ルートの施設内では、あえて職員も利用者も「名札」をつけていません。
    そこには「支援する側・される側」という専門職の記号を取り払い、ただ「一人の人間同士」として出逢ってほしいという想いがあるからです。

    建物の中心にあるラウンジは、いつも誰かしらが行き交う「ごちゃまぜ」の広場。

    ある日、子どもたちがご飯を食べる時間にお邪魔すると、とても愛おしい光景に出会いました。
    なかなかスプーンが進まない子がいても、職員が焦って口に運ぶことはしません。
    そばにいるエルダータウンのおばあちゃんや、ワンダーハーバーの利用者さんが

    「ゆっくりでいいよ」
    「美味しいねぇ」


    優しいまなざしでそっと声をかけるのです。
    見守るたくさんの大人たちに包まれて、子どもたちも自然と「いっしょに食べよう!」と笑顔でお友達に話しかけ始めます。

    「障がいのある人が、子どもにそっと寄り添う」
    「子どもたちの無邪気な姿が、お年寄りを笑顔にする」
    「お年寄りの深い眼差しが、働くスタッフの張り詰めた心をそっとほどいていく」

    ここにあるのは、
    誰かが誰かを一方的にケアする空間ではありません。
    お互いが、お互いにとっての「ヒーロー」になり、自然発生的に支え合いが生まれる、温かな町そのものなのです。

    そして、この町をトコトコと自由に歩き回る小さな子どもたちは、マ・ルート全体にまぶしい光を届ける「笑顔の郵便屋さん」。
    彼らが通り過ぎるだけで、フロア中にあたたかな笑い声が広がっていきます。

    他県から宮津へ移住を決めた彼女たちのストーリー

    満月の夜は、天橋立へ。
    マ・ルートの魅力に引き寄せられ、他県からこの宮津の地へ移住して働くことを決めた2人の先輩にお話を伺いました。

    ・ 清水 真実(しみず まみ)さん(山梨県出身)
    マ・ルートでのインターンを経て移住。
    現在は、京丹後市の「はごろも苑」館内にある「障がい福祉サービス事業所ぐるり」の施設長として、新たな場所から「ごちゃまぜの福祉」を牽引しています。

    ・ 松本 純怜(まつもと すみれ)さん(滋賀県出身)

    同じく「ごちゃまぜ」の現場を経験。
    現在は、次世代にその想いを繋ぐため、同法人の法人サポート部人事課で採用や育成に携わっています。

    ── この宮津という街の魅力について教えてください。

     

    清水さん:
    宮津に来たとき、山と海がすごく近くて、古い商店街が残るレトロな街並みに一目惚れしてしまいました。
    『ここに住みたい!』と直感的に思ったんです。
    移住者のコミュニティも盛んで、地域イベントも多いので、すぐにたくさんの友達ができました。
    暮らしのイメージが湧きやすかったのも大きかったです

     

    松本さん:
    一番はやっぱり、息をのむほど美しい景色ですね。
    社宅からも天橋立が見えるんです。車で15分ほどで行けるので、満月の夜なんかはよく天橋立までドライブに行っていました。
    海の満月に照らされる景色は本当に幻想的で。
    食べ物も魚やお野菜が新鮮で、本当に美味しいんですよ。

     

    ── 移住へのハードルは低かったのでしょうか?


    松本さん:
    そうですね。
    マ・ルートから徒歩3分ほどの場所に社宅があるのですが、3LDKという広さで家賃が2万5千円なんです!
    これは生活する上で本当にありがたかったですね。
    職場の先輩や利用者さんが、美味しいお店や楽しいスポットをたくさん教えてくれたので、引っ越してからも全然寂しくありませんでした。

     

    ── 実際に働いてみて、みねやま福祉会の「ごちゃまぜの福祉」はどうですか?


    清水さん:
    朝、出勤して朝礼をしていると、すぐ横を子どもたちが元気に登園していくんです。
    それだけで毎日癒やされますし、ちょっと悩んだときはおじいちゃん、おばあちゃんに人生相談をしたりして(笑)。
    職員と利用者という関係を超えた関わりは、きっとお互いの心にとってすごく健康的なんだと思います。


    松本さん:
    みねやま福祉会はすごく風通しがよく、若手のアイデアもどんどん採り入れてくれる風土があります。
    職場の雰囲気もとてもアットホームです。
    何より素敵だなと思うのは、職員みんなが利用者さん一人ひとりの尊厳を本当に大切にしていること。
    『今日、〇〇さんがこんなことができるようになったんだよ!』という小さな変化を、職員同士が自分のことのように嬉しそうに語り合うんです。
    目の前の個人の想いを守ることと、組織としての運営。
    そのバランスを追求しながら、未来の福祉を熱く語り合える仲間がいることが、私の何よりの誇りです。

    気が付けば、誰もが「ごちゃまぜ」の一員。

    「そのままのあなたで、大丈夫。」

    宮津のマ・ルートが教えてくれるのは、そんなシンプルな、でもとても大切なメッセージです。
    子どもも、お年寄りも、障がいのある方も、そしてここで働くスタッフたちも。
    誰もが弱さを持った一人の人間として、この豊かな自然の中で、お互いを認め合い、支え合いながら、のびのびと生きています。

    「支える・支えられる」という境界線が、
    海の青と空の青が溶け合うように消えていく場所。

    宮津のやわらかな風に吹かれながら、あなたも「ごちゃまぜの福祉」の中で、失敗を恐れず、自分らしい働き方と暮らしのカタチを見つけてみませんか?