「幸福度日本一※」を誇る福井県。自然の恵みに感謝して、日々の暮らしに向き合って。そんな福井のひとたちと過ごしていたら、お天気なのに雪がちらついてきました。これは「たぬきの嫁入り」、吉兆です。「ふく」がかさなる福祉留学・福井編、はじまりはじまり。

※『全47都道府県幸福度ランキング』(一般財団法人日本総合研究所)にて、2014年・2016年・2018年に幸福度日本一となった。

目次

    福井のこと・ば・ひと

    毎週のお楽しみ

    『江戸町かふぇ』で出会ったのは、手仕事を楽しむおかあさんたち。フェルトで人形を作っていました。暖簾をくぐったそのときから、仲よくなれます。

    越前そば!

    福井といえば、こちら。寒さが厳しい冬でも、おそばは冷たいのがいいんです。大根おろしの辛さについてはそれぞれ一家言あり。

    古民家のお庭

    このときの『オレンジキッズケアラボ』の施設※は、なんと古民家。お庭もよく手入れされていて、居心地がいい。

    ※2020年5月に新施設に移動予定。

    カニ!

    こちらも忘れてはなりません。高級な越前ガニの旬は秋ですが、身がするっととれる「ズボガニ」は冬にいただけます。

    ザッバーン!

    東尋坊に行くと行かないとじゃ、福井についての話題が違ってきます。サスペンスのシーン?とんでもない、ここにあるのは自然の造形美!

    福井の衣・食・住・遊

    福井で暮らすひとに聞きました。暮らしをかたちづくる「衣」「食」「住」に「遊」って? それぞれのテーマを突撃取材! このコーナーから福井市で暮らし、働くことが見えてくる?

    越前織

    『g cafe.』は若者で賑わうおしゃれなカフェ。でも、なぜ「衣」がカフェ? と思ったそこのあなた! よくよく見てほしい。コーヒーチケットが「タグ」でできていることに……。

    「タグ」とは、衣服の首の後ろについているあれです!

    実はここ、『柳澤織ネーム』という日本屈指の「タグ(越前織・織ネーム)」の生産をする工場が隣接しているカフェなのです。

    取材時、残念ながら工場の方にはお会いできなかったのですが(全国飛びまわられているそう!)、この越前織の技術で、なまえタグや、ストラップ、名刺入れ、そしてご覧のおしゃれなコーヒーチケットのように、オリジナルのデザインができるんだとか!

    『オレンジキッズケアラボ』でも、越前織のなまえタグを発見。

    あなたの服の後ろのタグも、ここ福井で作られたものかもしれませんよ?

    種類豊富なお惣菜

    「食」が豊富な福井。さぞ、ご当地グルメがたくさん出るかと思いきや、地元のひとが口をそろえて言うのは「お惣菜」とな……?

    まずは、地元で知らないひとはいない『オレボ』へ潜入捜査! ……なにこの種類。惣菜のダイバーシティや。コロッケが一個40円!? おかず量り売りなの? 学生もマダムもスーツ姿のお勤めのひとも、みんなオレボでランチをしていく。これが、福井の「食」スタイルか。

    さらなるディープスポットへとやってきたのは、『高橋工務店』。え? なぜに工務店に……? ここのお母さんが惣菜屋『ごっつぉ とうざらえ』を営んでいるんです。工務店内の小さなスペースの暖簾をくぐると、そこはお惣菜パラダイス。棚に所狭しと並ぶお惣菜、値段のないものは120円! というか、ほぼ120円。お店を営む高橋藤子さんは、毎朝4時に起きて仕込みをしているそう。「早いひとでは、出勤前の朝8時頃にはみえるからの」。

    なんと、手づくりの水ようかん(これも福井名物)をおまけしてもらっちゃいました!

    福井のしごとは、お惣菜で支えられていることを実感。

    まずは『江戸町かふぇ』へ!

    福井に来たら、まずは地域に顔見知りをつくるところから。でもどうやって? 大丈夫。福井市にある『江戸町かふぇ』では、暖簾をくぐった瞬間から地域のひとたちがあたたかく迎えてくれる。元々、介護サービスの会社に勤めていた脇屋和美さんが、地域のつながりを作ろうと2016年にオープン。人気観光スポットの『養浩館庭園』の近くに位置することもあって、観光に来た方々の休憩場所としても使ってもらおうと、お団子屋をはじめる。その他にもアロマエステ、筆文字のワークショップにカード占い……。手広すぎません?

    「ここは何屋かわからないってよく言われるます。だけど『みんなの笑顔のために』という一貫したテーマでやっています。場所を継続するためにお金も必要ですしね(笑)」

    薬剤師でもあり、ケアマネージャー(介護支援専門員)でもある脇屋さん。ここは、「たから保健室」という心身の健康や栄養について気軽に相談できる場所でもあります。

    「午前中は、毎週それぞれのサロンがあって、お昼以降は誰でも入れるカフェになります。誰とでも自然に会話がはずむ場所みたいで、ここで出会ってお友達になり、一緒に温泉行ったりごはん行ったり、みなさんされてますね」

    お邪魔したタイミングでは、ちょうど木曜日のメンバーが集まってフェルト人形を作っていました。たしかに「はじめまして」とは思えない雰囲気。「どこから来たん?」と話しかけてくれて、すぐに打ち解けました。知り合いもいなくて不安になったら、まずはここに来てぼんやりと過ごしてみるのもいいかも?

    山も海も!

    どこに行くにもだいたいクルマ。山にも海にも囲まれている福井。ということは……、当然キャンプ! クルマへ常にキャンプ用品を積んでいるひとも少なくないんだとか。

    「この間ここ行って〜、ビール飲みながらみんなで夕日見ました。キレイかった〜」

    と写真を見せ合いながらするこれは、日常会話。

    『オレンジキッズケアラボ』のメンバーも、休みの日には一緒に出かけることがあります。インド人スタッフのマンスールさんが出かけたのは、福井が誇る景勝・東尋坊。

    「寒い季節に行っても、やはりこの景色とみんなで出かける楽しさに、寒さは気にならない!」と、楽しい写真を見せてもらいました。

    オレンジキッズケアラボ

    こたえていく、かなえていく

    医療が必要な重度な障害をもつ子どもたちと家族が笑顔で安心して、夢と未来に向かって暮らすための『オレンジキッズケアラボ』。「枠にはめない」「こっちと向こうで線をひかない」ケアを実践し続けています。

    1対1以上のケアを

    一人に対してスタッフは必ず1名はついています。子どもたちの感性や成長に、驚きや発見の日々です。

    民家をケアの拠点に

    何事もニーズに応えて進化し続けるのがケアラボ流。要望人数に応えて、規模が大きくなりこちらは3軒目。2020年5月には新築施設が完成予定!

    お家ならでは

    こういうことをいちいち言ってると、ときにはちょっとキツめな声が出ちゃいますよね。ここには笑顔で働くための創意工夫がそこここに。

    やあ!

    この笑顔のそばには、ありとあらゆる職種のスタッフがいます。保育士、看護師、介護福祉士、栄養士、作業療法士、理学療法士、薬剤師、医師が、子どもたちを支えています。

    アイデアを待っています!

    「やったことないことはやってみたい」がケアラボの考え方。この「休憩中」のタスキも、スタッフから生まれたアイデア。経験は問わず、柔軟な発想や工夫ができる福祉留学生を待っています!

    COLUMN① 親子みたいな二人を直撃!

    『オレンジキッズケアラボ』の玉井昭子さんとインドからやってきたマンスールさん。常に子どもたちやスタッフに目を配って気づかう玉井さんと、日本の福祉を勉強しに来たというマンスールさんに話を聞きました。

    玉井 ここ(台所)では、子どもたち一人ずつの食事を用意しています。スタッフにも、ちょっとでもお腹にたまるものをと、小さく握ったおにぎりやひとくちサイズのおやつをテーブルの上に常備。子ども相手だとつい、自分のことを後回しにしてしまいがちでしょう? だから、スタッフをつかまえて「食べな!」って口に入れることも(笑)。

    マンスール 玉井さんは日本のお母さん。いつも気にかけてくれます。僕は、2018年11月にバンガロールから研修生※としてやってきました。現在のインドは、日本の30〜40年前と言われていて、これから介護福祉のニーズが急増すると言われています。ここで技術を学び、故郷で活かしたいと考えています。

    ※外国人技能実習制度を活用し、来日。

     

    玉井 マンスールはほんとうにすごいね。半年で日本語マスターしちゃったんだから。だけどここへ来た当初はすごく緊張してたね。マンスールだけじゃなく、誰でも表情が暗かったりすれば、声をかけます。安心してもらって、悩みを言える状況にもっていくまでが大事だと思っていて。言葉を壁にしてしまうと普段伝えられることも伝えられない。だから、よくごはん作ってましたね。

    マンスール 玉井さんのおろしそば、好きです。

    玉井 マンスールは宗教の関係上、食べられないものもあるので。おろしそばって言っても、野菜とエビのかき揚げとねぎを入れて、マンスールにも食べやすいものを考えて作っています。

    マンスール 海鮮は大丈夫。福井は魚、美味しいです。

    玉井 マンスールは頭がいいのですぐに理解してくれます。インドの話もよくしてくれて、こっちも勉強になりますよ。

    ここで働くスタッフが明るく仕事を続けてもらうための場づくりを心がけています。スタッフがほっとするような時間が5分でもあれば、残りの1時間も頑張れるでしょう?そのために、冗談を言ってみたりもしてます。

    マンスール 玉井さん、いつも面白いです。

    働くマンスールさん。『オレンジキッズケアラボ』では外国人技能実習制度を使って、医療福祉の技術を海外のひとにも渡せるようにしている。

    COLUMN② スペシャルインタビュー

    在宅医療コーディネーターの戸泉めぐみさん。立ち上げ当初から『オレンジキッズケアラボ』を見つめてきました。そんな戸泉さんに、医療福祉を目指した原点を聞きました。

    大工をしてたおじいちゃんが、あるとき屋根から落ちて頚椎を損傷して四肢麻痺で家にいたんですよ。物心ついたときにはおじいちゃんはそういう状態で、家に大きなベッドや車椅子があるっていう日常でした。当時は福祉制度はなかったから、家族みんなでおじいちゃんのお世話してました。ごはんの時間になると、車椅子で食堂に連れて行ってみんなで食べてました。

    ……おばあちゃん、かな。わたしが医療福祉を目指した原点は。寝たきりでも、家で一番偉いのはおじいちゃんやったんです。それは子どものわたしでも分かってた。ベッドで食事すれば楽だったと思うけど、おじいちゃんは必ず食堂で食事をしていた。おばあちゃんは毎日畑行って家事して、自分が

    きつくってもおじいちゃんの面倒を見てたんですよね。
    「おじいちゃんは幸せやなあ。われがこうして毎日身体拭いてやるでの〜」って、ちゃんとアピールはしてましたけど(笑)。
    おばあちゃんがすごいな、という気持ち。と同時に、どういう気持ちでケアが必要なひとと関わっていたのか知りたくて、この道に入ったのかもしれません。

    生活のなかでやっていたことを学問とするとどんな風に見えるのか知りたくて、大阪の社会福祉学部のある大学に進みました。勉強してみて、あらためて言語化されたものを見た、というか。ひとは皆同じである「ノーマライゼーション」とか「傾聴」とか、知ってるけど言葉にするとそうなんやね、という感じ。それまで感覚でやってきた介護を理論化して落とすことを学びました。言葉があって、ほかのひとに伝えることができるから。とは言っても、まだまだ感覚にんげんやけどね(笑)。

    ここで子どもたちと関わるようになったのも、出会いが運んでくれたこと。医療的ケアが必要な子たちが行く場所がなくて困っている子どもと家族に出会えて、「ないんなら、つくろう」とはじまったのがケアラボ。じゃあ、子どもたちが成長して学校行くときどうケアする? って、教育のことを勉強して、地元の学校や行政のひとらも関わってくれて。そこからどんどんご縁がつながってます。

    今日もね、新しい子が来てくれたんです。さっきもスタッフと「こうしたら、これもできるやろ。あ、これもできるようになるな」って話してて。その子は病気のためか、ハッピーを表出するのが苦手で。拒否の顔はできるんやけど、嬉しい、笑うが苦手なんですね。それを出せるようにしたいねって、皆で話し合ってます。
    その子もお母さんも、ケアラボに来るまでの社会って限られていたと思うんです。わたしはここに来たら、今よりもハッピーになるって。信じてるんです。そのために、何をするか。で、動く。そんな風に日々働いてますね。

    写真 : 水本 光
    編集・執筆 : 山本 梓
    プロデュース・ディレクション : 中浜 崇之(NPO法人Ubdobe)
    取材日 : 2020年2月5日~2月6日