福井県勝山市。

思わず深呼吸したくなるような静かな森林の中に佇むのは、今回ご紹介する特別養護老人ホーム「さくら荘」。実は今ここで、ある大きなチャレンジが行われようとしています。

今回は、そんな変化の真っ只中にいる皆さんからお話をお伺いしました。

仕掛け人は、地域医療を起点に各地で挑戦を続ける紅谷先生

今回、新たにこのさくら荘の理事に就任したのが、オレンジキッズケアラボでも代表理事を務める紅谷浩之先生。

これまで、在宅医療専門クリニックや放課後等デイサービスをはじめとする、様々な拠点を通じて福井の地域医療と向き合っていた中で、嘱託医という関係性だったさくら荘から経営を任されることになったそう。

「私はこれまで、どちらかというと『アンチ特養』でした。高齢者福祉について真剣に考えれば考えるほど、特別養護老人ホームという形態は、今の形のままでは時代に取り残されてしまうと、そう感じていたんです。

でも、だからこそ。今回のご縁を活かして、私たちだからこそできる新しい特別養護老人ホームをつくることが、大きな価値になるのではないかと考えました。」

こうして、山奥にひっそりと佇んでいたさくら荘の大きなチャレンジが始まったのです。

 

多様性溢れるスタッフが支える現場

さくら荘の新たなチャレンジのひとつ。それは、人材不足の解消です。
注目したのは、かねてよりあったインドとの繋がりでした。

やってきたのは15人のインド人スタッフ!

介護施設における海外からの人材受け入れの試みは少しずつ広がってきていますが、一度に15人という思いきりの良さにはさすがの一言。さらに、皆さん看護の経験と専門知識を持っており、その技術や心遣いは筋金入りだと評判です。

いつの間にか、日本人スタッフからも「インドからのスタッフのおかげでさくら荘の雰囲気が明るくなった」という声や「コミュニケーションの中で言葉遣いを意識するうちに、自分たちの仕事について改めて考え直すきっかけになった」という、思いもよらなかった嬉しい言葉が聞こえるように。

恐竜に出会える街?!

福井の代名詞といえば、恐竜!

実はこの勝山市がその恐竜カルチャーの中心地。昔から積極的な発掘作業が行われ、「フクイサウルス」「フクイラプトル」といった白亜紀の化石が次々と発見されています。

そんな背景もあって、勝山の街は恐竜だらけ。

かの有名な福井県立恐竜博物館の存在はもちろんのこと、さくら荘の近くでは全長16.9Mの巨大なホワイトザウルスと出会うことができます。

街を歩けば、あなたの「推しザウルス」が見つかるかもしれません。

美味しいグルメの存在も忘れてはいけません。

今回私たちがいただいたのは、勝山市にある「ラブリー牧場」がつくる、濃厚なソフトクリーム。トッピングで恐竜クッキーをのせれば、旅気分がますます盛り上がります!

そして、定番の「おろしそば」。大根おろしが添えられたシンプルなお蕎麦なので、お店ごとにその味わいも全く違うそう。食べ比べをしてみるのもおすすめです。

「地域と繋がる」という共通のビジョン

これからのさくら荘のビジョンを聞くと、口を揃えて出てくる言葉が「地域との交わり」です。

介護福祉士として勤めて2年目の臼井さんからは、こんなお話を聞くことができました。

「まだまだ利用者さんに我慢してもらっていることが沢山あると感じていて。もっと、利用者さん一人ひとりのやりたいことに着目した時間を提供できるようになりたいんです。そのひとつが、地域との繋がりだと思っています。施設が地域に開くことで、ご家族や外の人たちと触れる機会が増えたらいいなと思うんです。」

その思いは現場にとどまらず、総務の谷口さんからも。

地域に貢献できる福祉を作っていきたいですね。高齢福祉だけじゃなく、地域に関わる全ての福祉に関わっていきたいと思います。」

以前からさくら荘に勤めるスタッフからもこういった声が聞こえることに、チームとしての地盤の強さが伺えます。

「改革の瞬間」に参画できるのは今だけ!

そして現在、勝山の街なかに新たな土地を準備し、地域に開いた交流拠点の計画が進められているそう。紅谷先生が、キラキラした目でお話しされました。

「高齢者施設が『高齢者だけがまとまって住んでいる場所』であるという発想自体、もう古いんじゃないかと思っています。これからの高齢者の施設は、もっといろんな人が入り乱れて、その場がいろんな人にとってのチャレンジになったり、医療福祉に関心がない人も関わりたくなるような、そういう場所になっていかないと。そんな世界を実現できる場所を、勝山市の街中にゼロベースでつくっていきたいと思っています。

福祉留学に来てもらう子たちにも、そんな、多様な人が行き交う交差点のような場所の構想に関わってもらえたら嬉しいですね。」

 

既に完成されている場所を見ることはいつでもできますが、今まさに大きく変わっていくその瞬間に立ち会う経験は滅多にできるものではありません。

異文化、異分野、どんな方でも大歓迎。貴重な時間を、長年地域医療に携わってきたパワー溢れるチームと共に過ごしてみませんか?

さくら荘は、「今」が一番面白いかもしれません!

映像 : 末吉 理
編集・文・写真 : はぎわら しょうこ(NPO法人Ubdobe)

※取材対象者には一時的にマスクを外してもらい、撮影をしました。