大阪府で鍼灸師をしている岩井拓馬さん。
宮城県仙台市の連携施設「ライフの学校」に福祉留学へ。
2週間の滞在で、岩井さんが感じたことや印象に残ったことなどをお聞きしました。

2週間の福祉留学。率直な感想は?

留学先の「ライフの学校」では、施設の中に地域の方々と一緒に作った駄菓子屋があったり、施設のお庭を解放して文字通り風通しの良い仕組みづくりをしていました。
目で見てわかる魅力的な仕組みや福祉施設での業務もとても勉強になりましたが、何よりもそのような仕組みをつくりながら働いているスタッフの皆さんの考え方や法人の理念に感銘を受けました。

とくに印象に残っているのが代表の田中伸弥さんが初日のオリエンテーションでお話してくださった「安全と安心」についてです。
「ライフの学校」では「安心」を大切にしていて、出来る限りパートナーさん(利用者さん)の希望に沿った日常の過ごし方をスタッフのみなさんがサポートしているのが印象的でした。

福祉の仕事というと、とてもシビアで堅いイメージがあったけど、「こんなに自由にできるんやなぁ」ととても驚きました。

福祉留学に行く前と後で、岩井さんのなかに変化はありましたか?

福祉留学へ行く前は鍼灸師・マッサージ師として治療の技術を高めるべきか、利用者さんや患者さんとの関わりを重視するべきか迷っていたところがありました。
「ライフの学校」での経験を通して、やっぱり「人との関わり」を大事にしたいと思いました。
治療以外のことを大切にしていいんやなぁと改めて思えました。仕事やからじゃなくて、ひとりの人間として関わることが大事なんやなと。

「パートナーさんの日常を一緒に楽しく過ごす」という経験が大きなヒントになった気がします。
効率とかではなくて、やりたいことをちゃんとやるっていうことが、人間として学ぶ、ということなのかなと感じました。

「ライフの学校」では、パートナーさんの過去(これまでの人生)を大切にしていて、パートナーさんのライフストーリーの冊子を作っていました。
めちゃくちゃ読んでしまって(笑)パートナーさんたちひとりひとりの人生もそうだし、そういう過去のこともちゃんと見て「きっと喜んでくれるやろうな」と思っていろんな取り組みをしているのがすごいと思ったし、ひとりひとりのスタッフがそれぞれ考えていること、想いがあるんやなということも伝わってきました。
これまで考えてきたことが福祉留学に行って「これでいいんや」と思えたことがほんまによかったなぁと思います。

福祉留学に行ってよかったと思えたことをもうちょっと詳しく!

秋田に行った神山さんが「アナザースカイ」と言っていたけど、別の場所に居場所ができたという感覚にとても共感しています。
福祉留学を終えて、やっぱり「やりたいことをちゃんとやろう」と思って、今バイクで旅をしています(笑)
今旅をしているなかで、ひとりで過ごす時間がたくさんあって、いろいろなことを考えているのですが、「あの施設の人やったら」とか「あの施設やったらどうするやろう?」って頭によぎるんです。

間違いなく行ってよかったと思うし、まだまだ自分のなかで咀嚼しきれてないことがいっぱいあるんですけど、これからの人生できっと何度も「ライフの学校」で過ごした時間や経験のことを思い返すんやろうなと思います。
行ってみなわからん、いろんな人と話がしたいと思って応募した福祉留学でしたが、行ってみてもわからんもんはわからん、ということもわかったし、なんなら余計にわからんくなった(笑)。

それやのに、視野が広がったというか視界が拓けた感じがして、なんとなく安心してます。突き詰めていくほど普遍的になっていくというか。
「やるべき」より「やりたいこと」を大事にしたいとは思ってたけど、心のどこかで「やりたいことをほんまに優先していいんかな」っていう不安もありました。

でも失敗してもいっか、ちゃんと考え続けて、やりたいことをやっていくとブレない人生観みたいなものに繋がっていくんかなと今思っています。

これから福祉留学に行くかもしれない人たちにメッセージをお願いします!

まだ言葉にできないことがたくさんあって、難しいんですけど…福祉留学に行って僕は「点と点がつながっていく」という感覚を少し持てるようになった気がしています。

田中さんはじめ、スタッフのみなさんとのやりとりのなかで、まだ今は理解できてないこともあると思うんやけど、改めて自分の大事にしたいことを発見できたし、僕が福祉留学生として関わることで、スタッフの皆さんにも「気づきがあった」と言ってもらえました。
これからも見守られている感じ、これからも見といてください、みたいな気持ちになれたことは本当に貴重な良い経験だなと思っています。

担当者ゆずからひとこと

岩井くんの福祉留学での経験をお聞きして、代表の田中さん、施設長の菅原さんをはじめとした現場で関わった職員のみなさんとの出会いが、まるで岩井くんの人生を励ましているように感じました。
言葉にするのがまだ難しいと岩井くんはお話してくださいましたが、きれいにまとめられない「凹凸のある経験」をしてきたことがとっても大切なことなのではないかと気づかされました。

岩井くんの表情が変わっていく様子、いい顔してるなぁ!と感じたことが何より印象的でした!